緊急報告2005年09月22日 10時34分52秒

 絶対に面白くない。面白い訳がない。あり得ない。日本の政党が自民党一党だけになつたとしても、それはあり得ない。でも、山田風太郎が原作と知つて気なつて気になつて仕方がない。これは、見届けなければならない!と、思ひ「SINIBI 忍」を見に行つた。

 そうしたら、存外面白かつた‥‥‥。

 といふか、冒頭からしばらくは、やはりな‥‥‥とネガティブな気持ちになつた。忍者がぶんっぶんって凄い音たてて飛ぶなよ〜と悲しくなつた。「キラーエリート」のラストシーンを笑へないぞとか思つたりもした。
 が、夜叉丸の登場がなかなか感じ良く。山田風太郎の味とは違ふが、気持ちはわかる。と、さらに陽炎、蛍火の雰囲気がよく、山田風太郎ファンとしては、この二人を見てゐればいいのだと。話は間違ひなく面白いし。
 そんなわけで、さて評判はどうなんだらう。あえて緊急に面白かつたと書くのは、世評が厳しいだらうと予想してのことだが、評判がよかつたら叛旗をひるがえすかも知れない。

 勘違ひするかもしれないのであらかじめお断りしておくと、以下の文章も褒め言葉です。
 とにかく、こんなにすべてがちぐはぐでアンバランスな映画も珍しい。作り手一同のやりたいことやりたくないことが混沌と入り混ざつてゐる。楽しくてやりたくてやつてゐる人。やらねばならぬと何かを背負つてやつてゐる人。単純に喜んでやつてゐる人。仕事だからいつも通りやつてゐる人。不本意だがやつてゐる人。やりたくないからやつてない人。衣装もメイクも色彩もセットもロケーションも演技も音声も卍ともゑだ。それを「ひどい」と言ふことは容易いが、ぼくは気に入つた。なんだか得体の知れない力を感じた。カオスとはこのことを言ふのだらう。怨念すら感じる。
 そんなわけでエンディングで歌姫の歌声が流れた時、普段ならおいおいとか思ふんだけど、よかつたね。到達したね。と思つてしまつたのだ。
 哲学的に山田風太郎を再現するとかうなるのかも知れないと思つた。

 ちなみに「くの一忍法 観音開き」は山田風太郎の原作ではない。と、思ふ。が、数ある本家の映画化作品群よりも、山田風太郎を感じる作品です。

 ぼくが知る限り「世界一惜しい映画」
 クライマックス直前まで緊張感、重厚感抜群。素晴らしい作品なんだが、こともあらうに山場ですべて帳消しになつてしまうと言ふ逸品。