傘の旅2006年02月03日 23時09分59秒

 寒っ!!
 寒すぎる。出掛けた時は暖かかつたのに、冷たい強風が、バイクにぶち当たつて怖かつたぜ、キーボードを打つ手が、うまく動かない。

 と、まあ、現在の状況は『傘の旅』と関係ありません。

 写真は1月21日。東京地方に雪が降つた日であります。

 その日。

 井の頭線に傘を忘れた。

 雪が降つてゐる真つ最中に忘れるのだから、かなりおバカである。
 吉祥寺から明大前へ、京王線に乗り換へて下高井戸まで行くといふコースの、京王線明大前のホームではたと気がついた。

 と、ここで話は少々脱線するが(鉄道の話をしてゐて脱線とは言葉の使ひ方に配慮が無い)明大前から下高井戸へ行くのは注意が必要だ。うかつにしてゐてはいけない。実際注意してゐる人は少ないと思ふが、ぼくは2、3度失敗してゐる。
 京王線の凄いところは、特急、急行、快速、その他いろいろ種類が豊富な事である。明大前には全種類止まるが下高井戸に止まるのは各駅停車と快速だ。
 ここで、油断の話といふか思ひ込みの問題なんだが、特急や急行には乗つてはダメだと認識してゐるが、どうもぼくの中には『乗つてはいけない電車の次に来た電車に無条件で乗つてしまう』といふ不思議な条件反射が、内蔵されてゐるみたいなのだ。
 ホームで本など読んでゐるときは効果覿面(てきめん、こんな字だつたんだ)だ。
 京王線は、特急の後に急行(通勤快速かな、準特急といふのもある)が来たりする。つまり2台続けて下高井戸に止まらない電車が来る事がよくあるのだ。それを確認しないで乗つてしまい。気がつくと桜上水にゐるといふことになる。

 といふ訳で、最近ぼくは明大前では必ず電車の種類を確認するといふ細心の注意を払つてゐるのだ。(当たり前かも知れぬが)
 おかげで!?ぼくはこの日、傘を忘れた事に気がついた。丁度各駅停車が入つて来たところだつた。
 うっ!
 悩んだ。
 つまり、今すぐ探す。仕事が終はつてから探す。あきらめる。など頭の中を駆け巡つた。
 傘は、以前ブログで紹介した『43120』ネーム入りのカーボン傘だ!買つたばかり。

 ところで、また少々脱線するが、ぼくは西武新宿線上井草駅のホームに雨具を、東伏見の改札の外に帽子を忘れた事がある。それらはそれぞれ両駅で保管されてゐて、無事戻つたが、雨具も帽子もかなりボロボロの品でよくぞゴミと間違えられなかつたといふぐらいの代物で恥づかしかつた。それでも、取りに行かなければホントにただのゴミで邪魔なだけになるから迷惑といふものだ。渋谷某所で眼鏡ケースを無くした事がある。これは1週間後になつて探したので、出てこなかつた。確かにそこの店に忘れたといふ確証もない。
 なので、探し物は早くといふのが鉄則だ!
 まあ、そんなに力をこめていふほどのことでもないが。

 とりあえず井の頭線に戻り渋谷へ行く事にした。
 渋谷駅の改札の横で忘れ物しました〜。といふと、あそこでお願いします。と、遺失物捜索願の部屋を指差される。改札の外だつた。やはり電車賃は払つてからなのねと思ひつつ。出てから鉄製の扉をノックして入る。
 若い女性が待つてゐて(別に待つてゐたわけではないか)忘れ物しました。(ぼくは宿題を忘れましたみたいな恥づかしさ?)と手続きをとる。
 吉祥寺発何時何分の急行の渋谷側二両目の一番前のドアの横の手すりにかかつてます。把手に番号が書いてありますとよどみなく説明すると、どんな傘ですか?と聞かれてしまう。おお、しまつた!説明が足りなかつた。さらに色は?おお!改めて聞かれると何色だつたか!?
 薄い茶色です。と答えつつ、あの色を茶色と説明して勘違ひしないだらうかと気になる。ベージュといふべきだらうか?それともラクダ色?でも、微妙に違ふと思ふ、デジタル化の波で最近使はれなくなりつつあるが、セル絵の具の番号でなら言へるかも知れんが、京王電鉄の職員にYR系と言つても解る訳が無い。車両番号と思はれてしまうかも知れない。
 でも、把手は茶色で番号は黄色で大きく書いてあります。と、自信のある部分を強調した。物事を正確に伝えるのはむづかしい。
 さて、ダイヤグラムを確認してその電車はもうすぐ吉祥寺に着くので調べてもらいますと言はれる。ただ、吉祥寺で保管するので、そちらへ取りに行つてもらう事になるのですが、と、もしかすると申し訳なささうに言つた。まあ、行つたり来たりで、少し同情してくれたのか。
 ともあれ早速電話。向こうでどんな方が、応対したのかはわからないが、こちらの女性が遺失物のうんたらです。と言つたあと微妙な間で、ぐふふと笑ひをもらしながら「そうです傘です」と答えた。雪や雨の日には、こんな電話が行き交ふのだらう。
 よく雨の日に聞く「雨の日には傘の忘れ物が多くなっております」といふ車内放送の裏をとつたぜ。

 ぼくはその電車が吉祥寺に着くまで、その部屋で待つた。その間に別の忘れ傘が駅員さんの手により届いたり。
 そして一人女性が飛び込んで来た。
 傘忘れちゃった〜。と元気に飛び込んで来た女性は、今の電車、今の電車の一番前のイスの横にかけちゃったのよ〜と、続けた。担当の女性はなんとか口をはさみ、各駅停車ですかとか聞いてゐるが、飛び込み女性は(電車の話題で飛び込みといふ言葉選びも配慮がたりないか)聞く耳持たず。それでさあ、渋谷で受け取りたいんだけどと、有無を言はさず続けた。担当の女性は『今の』の電車が吉祥寺に戻る時間を確認しつつ、先ほどのぼくの時の様に吉祥寺に着いたところで、調べてもらいますからと言ひたかつたのだらうけど、飛び込み女性のマイペースにしばし絶句。
 それから、吉祥寺へ取りに行かなければならぬことを説明すると、ええ〜なんで〜お金かかるぢゃないと不服な反応。どうせ電車行ったり来たりしてるんだから、出来ないの〜。そのままくればいいぢゃないと言ふ。え!?そのままかけてくるんですか?と担当女性の戸惑ひ。つまり探さず。手すりにかかつたまま往復させろと言つたのだと思つたのだろう。多分違ふと思ふ。この飛び込み女性は、運転士なり車掌なりが保管して戻つてこいと言つてゐるのだ。
 これは忘れた立場のぼくにはなんとなく解る、傘を見つけたら車掌室に置いてピストン移送させるのだ。考え方としては合理的だと思ふ。しかし、それは鉄道会社のサービスではなからう。余計な負担といふものだ。まさか、それが事故につながる事もなからうが、思はぬ失策につながらないとも限らない。そのための専門職員を作る訳にも行くまい。宅配便ではない。担当女性も遺失物の移送はしてゐないのです。とすまなさうに答える。
 え〜〜〜〜。としばし(多分悩んだ。考えた)のち「じゃあいいわ」と出て行つてしまつた。傘が持ち主に戻らないことが決まつた瞬間である。
 それはそれとして、ずいぶんと横柄だなあ〜と思つた。忘れたのは自分だが、相手がなんでもしてくれるのが当たり前と思つてゐるやうだ。これが、平均的な人々の考え方なのかもしれないなとも思つた。いやあ〜こんな応対を続けてゐるのだとしたら、担当の人は大変だな〜と思ふ。
 せいぜい思ひ切り傘を忘れた奴を笑へばいいと思ふ。

 ところで、この日は雪のためダイヤは乱れ気味で、付いた電車は即折り返し!てな具合に、吉祥寺駅での確認は出来ず(せず?)ぼくの傘を乗せた電車は渋谷へ向かつてしまつた!
 すいません。と担当女性。何時何分渋谷着予定なんですが‥‥‥。あまり待たせてはと思つたのだらう。渋谷では必ず調べますから、後で電話をいただけますか?と言はれる。正直言つて待つてもよかつたのだが、あんまりヒマだと思はれてもそれはそれで恥づかしいので、では、と言つてその場を去つた。

 傘43120は無事戻つた。