昨年、いや、一昨年か、近所の病院の待合室で、とある雑誌(覚えてない)で伊福部昭のインタビュー記事を見た。
以下はその記憶をたどつて書くので、かなり曖昧な部分が多々あると思ふ。引用せやうといふのに雑誌の名前を忘れたのは失礼極まりないが、これから書く内容の手落ち具合を考えればかえつてよかつたかも‥‥‥。
他人の欠点を指摘できなくなつたら、教える立場から身をひくべきだとか、車輪は真ん中の何もない空間に意味があるとか、断片的に印象深いところはあるが、やはり映画音楽ことを書こう。
デビュー作「銀嶺の果て」(谷口千吉の監督第一作でもある)の時、白銀を滑る優雅なシーンで谷口監督はワルツをあてたかつたらしいが、伊福部昭は緊張感のあるスリリングな曲でなければいやだと反論したらしい。両者全然歩み寄らず、これは第一作から降板を覚悟したらしいが、この作品の脚本家でもあり、谷口監督の師匠でもある黒澤明が現場に居合はせ、「千ちゃん、作曲家がここまで言っているのだから意見を聞いてあげたら」と、アドバイスしてくれたらしい。師匠に言はれたら仕方あるまい。谷口氏は折れた。
ぼくはこの映画を見てゐないので、できばえについて何も言へないが、読んでゐて真つ先に思つたことは、黒澤明本人が監督だつたら、意見が食い違つたら相手は下ろされてゐただらうな。もう自分の作品ぢやないと思つて‥‥‥。といふことだ。
まあ、どうでもいいが、伊福部昭の曲は好きだ。
東映動画の長編作品「わんぱく王子の大蛇(おろち)退治」は怪獣映画そのもので、圧巻。だから!?怪獣映画のアンソロジーレコードに収録されてゐた‥‥‥いや、待てよ。
(‥‥‥コピーしたMDを探す‥‥‥つ〜か、レコードあるぢやん‥‥‥あつた)
『SF映画の世界 PART5』だ!ジャケット表が『ガッパ』裏が『ギララ』なのに、収録曲の約4分の3が「わんぱく王子の大蛇退治」のBGMだ!すげえ。帯に『オリジナル音楽、日本SF映画の傑作群ここに登場!』と書いてある。すげえ。しかもレーベルは『東宝レコード』だ。ガッパ日活、ギララ松竹だ。すげえ。
話を戻さう。特にズレた訳でもないけど‥‥‥。
伊福部昭は好きだ。「ビルマの竪琴(昔の)」や「サンダカン八番娼館 望郷」のメロディーは荘厳、哀切、超じょじょーだ。不届き千万ながら、このスローで重厚な名曲はテープを倍速にしてもメロディーがいい。(ぼくはAKAIのオープンデッキを愛用してゐた)ゴジラのエンディングテーマもこの部類だらう。
ついでだから「サンダカン八番娼館 望郷」のことを書く。
エキストラの話だ。夏だつた。東宝撮影所に若者、男のみ300人が集められた。ずら〜りと水兵姿の男たちが外で待機した。上陸した兵隊たちが、サンダカンの街(居並ぶ娼館)へ「わ〜〜〜〜」と言ひながら雪崩れ込むシーンのためである。その大勢の水平の間をメイクさんたちが行き交ひドーランを塗つて回つた。ぼくは日焼けしてゐたので、ちょうどいいやと塗られなかつた。人数多いし見える訳がないといふところだらうか。
このとき熊井啓監督は、病気のため入院してゐた。監督なしの撮影だ。見るとわかるが、大変短いシーンで、300人は映つてゐない。
さて、実は、ぼくはセットに走り込んだ記憶がない。サンダカンの街のセットは屋内に組まれてゐて、扉を開け放して、よ〜いドン!で、先頭集団から走り込んで行つたのだが、つまり、並んで待機してゐた集団がどんどん走り込むのはいいが、満員になつてしまつたのではないだらうか?ぼくは、列のどの辺にゐたのか記憶は定かでない。なんとなく入り口は見た気がするのだが‥‥‥。
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