みゆき座2006年03月09日 23時50分11秒

 映画館には顔がある。まあ、上映する作品の傾向がだいたい決まつてゐる。たとえば大作系、アクション系、アート系などの分け方があるし、あるいは見る側に合はせて若者向き、マダム向き、オタク向きなどに分別してゐるところもあらう。シネコンが増えて来たが、こだわりの映画館もまだまだ残つてゐる。渋谷にはアート系がいくつかあるし、マダム系(あえて正直におばさん系と言つてもいいが‥‥‥いつの頃からかなんとなく文化村の『ルシネマ』が入りづらい‥‥‥)もある。括弧内のコメントを深く追究する気はないが、日比谷のシャンテシネは余談をゆるさない微妙な立場にゐると思ふ。ことの発端はレディースディの定着だと思ふが、がんばつて欲しいと思ふ?
 その日比谷だが、日比谷の映画館と言へば、ずばり『日比谷映画劇場』『有楽座』『スカラ座』『みゆき座』とあつた。前2つは今はない。後ろ2つは、宝塚ビルに残つてゐるが、完全に様変はりしてゐて(階数も違ふ)別物と言つてもいいぐらいだが、名前だけでも残つてゐるのはうれしい。
『日比谷映画劇場』は、建物が古風な円形劇場の作りでかつこよかつた。007シリーズなどアクションものが多かつた。
『有楽座』は大作、文芸作品が多かつた。『スカラ座』は『有楽座』的だが、少々遠慮した作品が多かつたか。
 問題は同じビル内にあつた『みゆき座』である。みゆき通りにあるからみゆき座なんだが、名前の雰囲気から基本的には女性向き作品を上映してゐた。しやうとしてゐた。いや、少なくとも方針はさうだつたと考えられる。の筈だ‥‥‥。
 名画座に落ちてから見た物も多くあると思ふが、調べるのに時間がかかるので、とりあえず『みゆき座』(ロードショー)で見たものを掘り出してみた。

 これなんか方針に間違ひはないと思ふ。「恋人同士で見るにはゼッタイ」なんて書いてあつたりする。ぼくは一人で見た。大人の映画だと思つた。つまり、子供にはたいして面白くなかつたといふことかな‥‥‥。

 これもまあ「涙が溢れ出て‥‥‥」なんて書いてあるし、戦場へ行ったけれど、映画の大半は「秘密の隔離室」なので、間違ひなく男の子向け作品ではない。これは大混雑だつたことを覚えてゐる。ぼくは男友達数人と行つた。立ち見なんだが、立つ場所もなく通路の階段に座つて見た気がする。確かに大勢泣いてゐたと記憶するが、一生懸命感動せやうと努力してみたが、社会勉強の足りない子供には退屈だつた。

 これは、好きな映画だ。ただ、意味は不明だ。女性向きかどうかもよくは知れない。ファッショナブルといふ見方もあるが、むしろ見世物小屋的なイメージが強い。フェリーニ映画では、これと『オーケストラリハーサル』がとにかく印象深い。でも、まあ、映画館の顔の範疇だとは思ふ。
 さて、やうやく本題だ!?

 ふふふふふ。
 パゾリーニですよ。ほほほ。さすがに『ソドムの市』をここでやつたかどうかは覚えてません。『カンタベリー物語』の一作前『デカメロン』は、みゆき座でしたね。確か。あれは、まあ、表現はともかく、性愛ものといふことで、女性?カップル?いいですよ。でもこれ『カンタベリー物語』はもう大きな声では言へないけれど、うんこものですよ。いや〜。クライマックスの「人間ウンコ」(人間のウンコでなく「人間ウンコ」ね)がぼとぼとぼとー!どどどどどっどー!と、吹き出すシーンは圧巻ですね。
 これ、方針にあつてたんでせうか?この中央の女性、一見美形に見えますか?ぼくは見えたんですけどね(それが目的で見たわけではありません)、しかし、パゾリーニは『デカメロン』以来、ずぶの素人を使ふことに開眼して、これもさうです。しかも素人を素人らしく撮ることに意義を見出してゐる(そもそも女性への興味の比重が少ない)ために、美しい人は出てきません。(繰り返しますが美しく撮らうとしてゐない。少なくとも俗世間的に)
 と、この意外性が『みゆき座』の顔なんです。
 つづく‥‥‥。